①ボディタッチ☓コンポン煉炭
「なに、取って食いはしないさ、こっちへおいで炭治郎」
小さな背中に声を掛けると、狸はこんもりとした尻尾をお腹に回すように抱きながら、狐に向き直った。頭のてっぺんの、仕舞い忘れた狸の耳飾りが、からりと揺れた。不安そうにこちらを見上げる姿に、狐は出来るだけ優しく口を開いた──完全に人に化け切った狐の唇は、狸が驚くほどに赤く見えるのだろう。ひくりと、狸の肩が揺れた。
「足の具合はどうだ」
「おかげさまで……」
「どれ、見せてごらん」
おいでおいでと人の手で手招きしても、半妖の狸は尻尾を抱いたまま動かない。足首に幾重にも巻いた包帯が痛々しい。人里で獣害対策に仕掛けた罠に彼は掛かってしまったのだ。さぞや怖かっただろう。
ふと、狐の背中にふわりと幾つもの尻尾が伸び上がってきて、狸の足元へとわさわさと這って行った。狸は目を丸くしていたが、突如として現れた狐の尻尾にされるがまま、身を固くしていた。紅葉のような手が、狸の抱えた尻尾をキツくかき抱いている。
毛先が、丸い頬を撫でる。それから強張った肩を、大事なものを抱えた働き者の手を、礼儀正しく正座している膝を擽り、包帯の上を優しく撫でた。
「杏寿郎様……」
炭治郎の目が、縋るように狐を見上げた。
「杏寿郎様は、いつ俺を狸鍋にして食べてくれるのですか。怪我も、もうだいぶ良くなりましたし、そろそろ食べ頃だと思うのですが……あっ」
ふわふわとした毛先が、狸の鼻を擽った。その柔らかさと、纏う匂いに戸惑いながら、狸はその小さな頬を赤くさせて俯いた。狐の目が、弧を描く。
「なに、今すぐ取って食いはしないよ」
②乳首舐め☓ファンタジー煉炭
「つまり、煉獄団長の経験から言うと……乳首を舐めることで、消耗した魔力が快復するということですね!」
曇りなき眼でぐっと拳を握り締めた、うら若き魔法使いの前で、煉獄はぎゅっと自身の胸もとを押さえた。戦場経験も乏しい魔法使いは「どうしました!」と、煉獄のことを心配そうに見上げてくれている。幼さの残る丸い顔に嵌った、宝石のような瞳に見つめられると、乳首を舐めたからと言って魔力は快復しないのだ、などと本当の事を口走りそうになる。
だが、今は一刻を争う事態だ。
そう自分に言い聞かせて、パーティから魔法使いを庇うように茂みに連れ込んだ。
「炭治郎、決して声を上げてはいけないよ。ドラゴンに気付かれる前に、魔力を快復させておこう」
そう、自分たちにはドラゴン討伐という立派な使命がある。少数精鋭のパーティ編成で挑んだのはいいものの、相手はこの辺りの村を灰燼に帰したドラゴンだ。生半可な覚悟で挑んではいけないのだ。
膝をつき、黒いローブ姿の炭治郎の胸もとを寛げる。身体のラインの何もかもを包み込んでしまう、分厚い生地の中から、下着すら身に着けていない肌が顕になる。布が胸を滑り、ぷっくりと膨れた朱鷺色の乳首が目の前に現れる。
「きれいだ……」
うっとりと呟き、乳首越しに彼を見上げる。腕の中ほどまで引き落とされた布が、彼を更に蠱惑的に映している。二人の目が絡み合って、互いの頬に熱が灯る。彼の羞恥で潤んだ瞳を見上げながら、その頂きに吸い付いた。ドラゴン討伐のためという尤もらしい言い訳のもとで、己の欲望を満たすことを、二人は静かに了承するのだった。
③フレンチキス☓現パロ煉炭
「顔を上げてごらん、炭治郎」
「嫌です…」
「俺としては、熱い抱擁も好きだが、やっぱり君の顔が見たいなぁ」
いやいやと首を振った恋人は、ますますぎゅうっと煉獄に抱き着いてきては、その胸に顔を埋めていた。同棲を始めて一ヶ月、パン屋と教師のすれ違い生活がこうも続くとは思っておらず、お互い久々に抱き締め合えたのは、つい今しがたのこと。玄関先で抱擁を交わすこと数分、煉獄は恋人の顔にキスをしようと試みて、この有様である。
「君のかわいい唇に触れさせてくれないか」
恋人同士だった頃は、顎が涎でべとべとになっても厭わないくらい、激しいキスをした間柄だというのに。ここ一ヶ月、ほとんどスキンシップができなかったせいで、彼の中で何かが変わってしまったのだろうか。
「ほんの少し唇を触れ合わせるだけだ」
しがみつく指先が、ほんの少しだけ震えた。
「そう言って……」
「ん?」
「前もそう言って、中まで入れたじゃないですか」
はて、いつのことだろうか。
「先っぽだけって、言ったのに……」
片眉を上げて見下ろせば、炭治郎は真っ赤な頬を押し付けたまま小刻みに震えている。その目線の先にあるものに気が付いているのだろう。
「そんなことも、あったかなぁ」
彼の奥深くに入りたがるそれを、態とに腹に押し当てながら、煉獄はくつくつと笑った。日の光を象ったピアスに触れて、細い顎に指を辿らせる。くいと傾けたその顔は、嫌だという割には簡単にこの腕の中に落ちてきた。合わせた舌の温もりに、溶かされて。
④汗☓医パロ煉炭
空調の効いた診察室。額にふつりと浮かんだ汗をぼんやりと見上げながら、彼の手が流れるような速さで聴診器を当てる様子に見惚れていた。衣服の上に押し当てられたそれは、程よい強さで胸の音を聴き、背中の音を聴いた。咳き込む俺に、彼は目もとを柔らかに細めてくれるから、余計に熱が上がりそうだ。
「風邪という診断になりますね。咳止めと、喉の炎症を抑える薬を出しておきましょう」
「ありがとうございます」
そう応えるのは、背後でじっと先生の診察を見守っていた母親だ。先生は、医者にしては派手な風貌をしていたが、物腰がとても柔らかで、瞬時にして大人の警戒心を解くのだろう。
俺もそうだ。
この診察室に入ってから、彼の一挙一動に見惚れている。
つうっと、先生の太い首筋に汗が流れていく。清廉な白衣に似つかわしくない、大人の男を感じさせる喉仏が大きく動いて「炭治郎くん」と明るい声を響かせた。
「お母さんの言うことを聞いて、お薬をしっかり飲んでいれば治るからね。──もう安心だ!」
太陽みたいな笑顔で、くしゃりと頭を撫でられてしまったら、もう彼の虜だ。俺は子供ながらに、真っ赤な顔で俯いて先生の逞しい太腿に視線を落とした。自分の父親よりもずっと立派な足だ。きっと走ったら、誰よりも遠くに行けるに違いない。
「先生、ありがとうございました」
母親が頭を下げ、俺はぼんやりとした頭で診察室を後にする。退室する一瞬に垣間見た、先生のシャープな横顔に恋に落ちただなんて、誰に言ったらいいのだろう。
⑤髪の毛☓キ学軸煉炭
「先生の髪の毛が欲しいです!」
そう息巻いては、社会科準備室に突撃してきたのは、一年の竈門炭治郎だった。成績も生活態度も申し分ない優等生の奇行に、俺は只々呆けてばかりだ。
「どうして切ってしまったんですか……」
竈門は肩を落としつつも、手慣れた様子で準備室備え付けの小棚からコーヒーとカップを取り出すと、常に保温してあるポットからお湯と砂糖、クリームを注ぎ、スプーンでくるりとかき混ぜた。俺はそんな彼を咎めるどころか、「ありがとう」なんて言って、カップを受け取っている。
うん、俺好みの甘いコーヒーだ。
「休日にカップラーメンを作ろうとしたら火柱が立って……その時にだいぶ焦がしてしまってな……似合わなかっただろうか」
すっきりと切り揃えられた後ろ髪を撫でつつ、ソファに腰を下ろす。当然のように、自分もコーヒーを作って隣に座る竈門に笑みが零れる。
「似合う似合わないの問題じゃないです! 煉獄先生の髪の毛が、この世から消えてしまうほうが問題です!」
「そんなに重要か」
「重要です!」
頬を膨らませながらカップに口付ける子供の目は、ずっと俺の顔に釘付けだ。その目の輝きも、その頬の赤みも、近過ぎる距離の意味も全部わかっている。
「だから、先生の髪の毛……欲しいんです……」
「俺の髪の毛なんて貰って、どうするんだ」
「……秘密です」
もの欲しげな視線をうまく躱して、けれどその心を決して手放したくはない。そう思いながら飲むコーヒーは、ひどく甘ったるく感じた。
➅匂い☓大正軸煉炭
「君は鼻がいいんだろう、感情の機微も感じ取れるくらいに」
半ば苛立ち紛れの匂いを纏わせた煉獄さんが、俺を壁に追い詰めるようにして見下ろしている。任務帰りで、師範である彼の屋敷に訪れたらものすごい勢いで腕を引かれ、この有様だ。とんと理由が思い浮かばないからこそ、今の煉獄さんが恐ろしい。
「……怒ってます、よね……」
「うん、よろしい。では何故俺が怒っているか、わかるか」
片目だけとなっても、彼の眼光は鋭い。その痛いほどの視線に晒されながら、俺は習慣のように匂いを嗅ぎとった。怒り、苛立ち、嫉妬。そのどれもに思い当たるところがなくて、立ち昇るこの匂いに気圧されてしまう。
「すみません……」
「君の優秀な鼻でもわからないか」
「怒っていらっしゃるのは、わかるのですが……どうしてなのかわからなくて……あっ」
くいと、顎を掴まれた。上向いた視界に、熱っぽい眼差しの彼が映る。
「炭治郎、君は俺だけのものだ。その目も、身体も、何もかもが……俺だけのものだ」
強い独占欲だ、とてつもない執着だ。濃く深く、どろりとした匂いに、こちらまでもが囚われてしまいそうだ。
指先が、汗でべたついた首筋を辿り、隊服の釦に触れる。ピンと指で弾かれて、俺は促されるままに煉獄さんの前で衣服を剥ぎ取っていく。彼の迸るほど昂ぶっていく感情の匂いに、身体中を舐られていく感覚。気が付けばこの身体は火照り、芯に熱が集まっていく。
きっと、この匂いだ。
彼のこの匂いを、刻一刻と変化していくこの人の匂いを、俺自身が欲しているのだ。

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